車のメンテナンス
更新日:2024.04.24 / 掲載日:2024.04.23
自動車整備士不足に新たな一手。独マイスター制度採用の育成プログラムに注目。
100年に1度の変革期と言われる自動車業界。EVシフトの話題が日夜世間を騒がせていますが、その傍らでは自動車整備士の人材不足が深刻化している。
新たな担い手の不足による整備士の高齢化が進んでいるこの問題に白羽の矢を立てのが、ドイツ企業の日本市場参入や日本での事業活動支援を行う在日ドイツ商工会議所。日本ではマイスター制度として知られるドイツの専門職業訓練制度を採用したという自動車整備士の育成プログラムを、BMWジャパン、三菱ふそうトラック・バスなどパートナー企業とともスタートさせることを発表した。
即戦力人材を育てる「ドイツ専門職業訓練 自動車整備士育成プログラム」
日本ではマイスター制度として知られるドイツの専門職業訓練制度は、企業で働きながら技術や技能を習得する「実践」と、専門知識や一般教養を学ぶ「講義」を並行して受講し、試験を経て認定を受ける、というもの。経済成長や産業発展を助けるだけでなく、若年層へのキャリアパス提供など社会課題の解決にもつながる制度として50年以上続いており、現在ドイツでは327の職種で取り入れられており労働人口の5%が研修生となっている。また、ドイツをはじめ48ヵ国・52都市で導入され、ドイツ外の卒業生は27,000人以上にのぼるなど他国での導入実績も充実している。
日本では初の導入となるドイツ専門職業訓練制度だが、今回の整備士育成プログラムでは、ドイツのカリキュラムをもとに日本の状況に合わせて検討して構成されたオリジナルプログラムを適用。日本での整備士育成訓練でカバーされる内容に加えて、ADAS (先進運転支援システム)など最新のモビリティテクノロジーの内容が含まれており、パートナー企業は最新の技術をもった即戦力の人材を獲得することができる。
3年間の研修プログラムを修了するとドイツ国家資格を取得でき、そのまま研修先の企業にフルタイム社員として就職することができる。さらに、研修中は給与や学費などの資金援助があり、研修に集中することができる環境が約束されているのは研修生にとっても大きなメリットと言える。
第1期は、三菱ふそうトラック・バスから18名(2024年新卒社員を含めた若手メカニックの一部)が本プログラムに参加。BMWジャパンは正規ディーラーで少人数を採用予定としている。来期から研修生の数を増やし、ゆくゆくは一期につき100人程度を目指しているという。
教育パートナーも、まずは東京都上野の「NPO法人メカニックカレッジ」、兵庫県神戸の「阪神自動車航空鉄道専門学校」にて研修が行われるが、今後はパートナーとなる専門学校を全国的に増やして行きたいとしている。
現在は、日本の自動車整備士資格は得られないものとなっているが、在日ドイツ商工会議所 カーメカトロニクス専門コーディネーターの菊地隆一氏曰く「ゆくゆくは本プログラムの修了者は日本の実技試験をパスできるような形にしていきたい」としている。
本プロジェクトに参画した三菱ふそうトラック・バスは、今回の3年間の研修の終了後に、新卒社員の研修を全面的に本プログラムに移行することを検討しているとした。
日本初導入となる「ドイツ専門職業訓練 自動車整備士育成プログラム」。自動車業界が直面する若年層の整備士不足という課題を解決する一手となるか、今後の動向にも要注目だ。
■在日ドイツ商工会議所(「ドイツ専門職業訓練」自動車整備士養成プログラムについて) https://japan.ahk.de/jp